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ハイレゾ配信3 (『LISTEN / DSD trio(井上鑑&山木秀夫&三沢またろう)』〜成果篇〜』

前回前々回と書いて来た今年チャレンジしたハイレゾアルバム制作、今回はリリースから丁度半年経った現時点での成果篇を。

タイムリーな事にお世話になっているe-onkyoのサイトに年間アルバムランキングが発表されていた。


年間アルバムランキング - ハイレゾ音源配信サイト【e-onkyo music】

『LISTEN / DSD trio(井上鑑&山木秀夫&三沢またろう)』は97位にランクイン!ハイレゾと言ってもフォーマットは多々あるのだけど、DSD trioは思い切ってDSD(DSF) 5.6MHzのみを配信。ざっとチャートを見た所ではDSDのみの作品は唯一なんじゃないかな?全体的にはやはり普通のDAWで制作可能なWAV、それを変換したFLACが多いし、リスナーの再生環境の普及度からしてもそれらを含めた方が広範なリスナーに届けられるので当然と言える。私は今回は初めてのDSDフォーマットだし(アーティスト名もDSD trioだし・・・笑)、DSDで制作したデータをソフトで変換して別フォーマットでもというのが若干安易に思えて(ただこの行程に問題があると考えているわけではない。オノセイゲン氏も「一番レゾリューションが高い5.6MHzのDSDを作ったら、そこからあとはダウンコンバートするだけ」と語っている)潔くDSDのみを選んだ。でも逆にDSDのみでこれだけセールスが上がるというのは、現在のハイレゾ市場でDSDがいかに注目されているかが分かる。

(話しは逸れるが、こうやってe-onkyoのチャートを眺めていると、並んでいる作品がとても音楽的で既に私も持っている作品も多く、今回見ていて思わずポチってしまった作品もいくつかある。オリコンチャートなんかとはエラい違いだ。あと、チラホラとアニメソングがチャートインしているのもハイレゾチャートの特徴。アニメファンの方々はテーマ音楽も熱心に集めては聴く人が多く、出費を惜しまない事で当初のハイレゾ市場を牽引したという流れもあったらしい。)

更に、売上げベースでハイレゾ配信とCDを比べてみると、現状で両者は丁度同じくらいのセールス。もう巷で散々言われている様にCDはホントに売れなくなって、店頭での売上げなど殆どあてに出来なくなってしまった。Amazonの存在がかろうじて救いというような状況。

で、ハイレゾはアルバム1枚¥3,024、1曲¥378とCD以上の価格設定に出来ている事、プレス印刷、流通などモノを作って運ぶコストがかからない事で、1DLあたりの利益が大きいのがメリット。配信サイトとの直取り引きであれば売上げ1枚あたりの利益はCDの倍くらいになる。

これ、CDのみでは制作費をリクープ出来なかったところを、ハイレゾの売上げによって何とかカバー出来ているわけで、誠にありがたい限り。DSD trioのメンバー、音楽性、ファン層においては良く言われる「ハイレゾなんてマニアにしか分からない」なんて事は全くなく、むしろ積極的に選択されている。現時点での音楽発信の在り方としてハイレゾ市場に可能性は十分あると思われる。


Amazon.co.jp: DSD trio, 井上鑑, 山木秀夫, 三沢またろう : LISTEN - 音楽

あと、前回も書いたが「CD vs ハイレゾで音の違いは分かるか!?」みたいな話しもよく見かけるし、私も今回の制作を通じて様々な資料に触れ、多くの現場体験をしながらやって来たわけだけど、「ちゃんと作られたハイレゾ音源は当然の様に音はメチャクチャ良いよ!」という事と共に、“もはや過去のものになろうとしているCD”との比較に大した意味があるとは思えない。


ASCII.jp:ハイレゾはなぜ音がいいのか? 聴こえない心地よさの秘密 (1/3)|麻倉怜士のハイレゾ入門講座

音楽制作の現場はずっと前から24bit 96kHzといったハイレゾ仕様で作業をしていたのに、それをわざわざ16bit 44.1kHzのCDスペックに落としてリリースして来た。単純に24bit→16bitで失われるものは結構あるので、「このスタジオで鳴っている音を そのままリリース出来たらいいのに」という感覚を持つアーティストも多かったと思う。

それがこうして音楽配信が定着し、通信の高速化、ハードディスクの大容量化と条件が揃った現在、最初から当たり前に“最もよいスペックの作品”をリスナーに届ければよいのであって、いちいち「CDと聞き分けが出来るのか!?」なんて考える必要はないし、数年後には“ハイレゾ”なんて呼称も無くなるだろう。

また、ハイレゾ再生環境も高級機から廉価なものまで揃って来たし、今年に入ってからはスマホで気軽に楽しめるようにもなっている。多くの人にとってCDプレイヤーよりもこれら機器の方が身近になるのにそう時間はかからないと思われる。

という事で、今回の『LISTEN / DSD trio(井上鑑&山木秀夫&三沢またろう)』はこのメンバーの名に恥じない金字塔を打ち立てようと細部までこだわって制作し、自信を持って世に出したDSD作品。実際絶大な評価も頂けた事もあって納得の行く成果に繋がったと思う。制作開始時には「マニアック市場にいち早くチャレンジ」と思っていたものが、実際やってみたらちゃんと頼りになる規模の市場が存在し、リスナーにも受け入れられたという事。

ただ、「ハイレゾの普及でかつてのような音楽シーンの活況が戻ってくるのか?」というとそれはまたちょっと違う、と考えている。その辺は少し違った話題なのでまた改めて。