相変わらず今年も音楽業界に明るい話題は多くなかったように思われるが、「ハイレゾ配信」については様々な製品が投入され、静かな盛り上がりを見せている。一昨日の朝日新聞デジタルにハイレゾ配信に関する記事が掲載されていた。
ハイレゾ、音楽市場に光明 情報量「CDの3~7倍」:朝日新聞デジタル
今年は私もshiosaiの『LISTEN / DSD trio(井上鑑&山木秀夫&三沢またろう)』でハイレゾ配信を前提としたアルバム制作を行ったのでそのまとめとして。
LISTEN - ハイレゾ音源配信サイト【e-onkyo music】
『LISTEN』の製作は昨年の夏頃、私が井上鑑さんに「DSDフォーマットで1作何か作ってみましょうか。」と持ちかけたところ、丁度鑑さんもDSDに興味を持っていたジャストなタイミングだった。で、「だったら山ちゃん(山木秀夫)とまたろうとのトリオだったらフォーマットの特性と魅力を活かした作品が出来るかも」という全く迷う事なく企画が決定。そして11月にはshiosaiが運営するライブハウス「ラストワルツ」から始まる3度のライブを敢行〜年明けてレコーディングというなんともスムースな流れ(笑)。この辺は長年の盟友3人という事と、打楽器2人&キーボードという音楽的な自由度が高いフォーマットという事が大きい。
以下はその今年2/19&20のレコーディングの様子。
↓レコーディングに使用された8chマルチトラックDSDレコーダー「KORG Clarity」
鑑さんはピアノに加えキャリアの要所を彩るYAMAHA「DX-7」とここ数年愛用しているアナログシンセ「Prophet ’08」をMOTIFで鳴らしている。
レコーディングは予め用意し、昨年のツアーでも演奏していた楽曲に現場の即興演奏で生まれた数曲をサウンドチェック〜本番とほぼすべての曲を1テイクor2テイクで収録。曲によってそこに少々のダビングを施す流れ。
ここで笑えたのが「KORG Clarity」はマルチトラックと言っても8chしかないので、長らく親しんだPro Toolsの数十chとほぼ無制限にトラックを使える環境と比べると結構な落差がある事。思わず反射的に「じゃあ、もう2トラック作ってもらって」なんてリクエストが出つつ、「あ、もうチャンネルないのか!(笑)」みたいな場面が何度かあった。
この辺の録音〜更に編集における成約は音楽の方向性によってはDSDフォーマットの向き不向きはあるだろうと思われる。ただ、このメンバーだとベーシックはそれこそあらかじめ2chにまとめた1発録音でOKな事もあって、そんな成約も「何だか20代の頃のレコーディングみたいで楽しいね♪」なんて雰囲気に。
DSDフォーマットでの製作ならではの話としては、メンバーがダビングの際のモニタリングにおいて「レコーダーから再生される音と、録音が始まった後のモニター音が全く差がなくてPro Toolsに慣れているとビックリする」といった感想、コントロールルームで鳴る音の新鮮さを喜びながらノリにのって作業を続けるメンバーの姿がとても印象的だった事かな。
ハイレゾでも何でもまずは奏でられる演奏が豊かで、イイ音が鳴っている事が大前提。
と言う事でこの続きはまた次回。